シャトー・ペトリュスは「神話の象徴」とまで評される伝説的なボルドーワインで、ワイン好きなら誰でも一度はあこがれる存在です。そのシャトー・ペトリュスには、特に高く評価される「当たり年」があります。当たり年のシャトー・ペトリュスが自宅に眠っている方は、より高く売るためのコツを押さえておくとよいでしょう。
この記事では、シャトー・ペトリュスの歴史や高い理由、当たり年などについて解説します。高く売るコツやおすすめの飲み方も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)とは
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)とは、フランス・ボルドー地方のポムロール地区に位置する世界的に有名なワイナリーです。ここで造られたワインはペトリュスと呼ばれ、世界中に愛好家がいます。
ペトリュスは、特にメルロー種のブドウをほぼ100%使用することが多く、その濃厚な果実味とシルクのような滑らかな口当たりが特徴です。熟成が進むと果実味がより豊かになり、滑らかなタンニンと酸味も相まって絶妙なバランスになります。トリュフやダークチェリー、チョコレートを思わせる奥深いアロマも、ペトリュスの魅力です。
ボルドーワインといえば5大シャトーが有名ですが、シャトー・ペトリュスはここに含まれていません。5大シャトーとは、メドック地方の格付けで第1級と認められたワイナリーであり、シャトー・ペトリュスのあるポムロール地区にワイナリーの公的な格付けがないためです。
このように、ほかのボルドーの名門シャトーとは異なり、シャトー・ペトリュスは格付け制度の対象外となっています。にもかかわらず、その品質の高さで「世界最高峰のワインの一つ」と称されているのです。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の歴史
シャトー・ペトリュスの歴史は19世紀に遡ります。もともとはボルドー地方の小さなワイナリーの一つでしたが、1889年に開催されたパリ万博で金賞を受賞し、その品質の高さが注目を集めました。しかしそれでも、当時はまだ現在のような高級ワインとしての地位は確立されていませんでした。
20世紀に入り、シャトー・ペトリュス隆盛の立役者となったのがマダム・ルーバです。1920年代にシャトー・ペトリュスのオーナーとなったマダム・ルーバは、畑や醸造を改良するなどの献身的な働きで、ワインの品質を高めていきました。その結果、シャトー・ペトリュスの名は世界中に広まり、ロックフェラー家やケネディ家を顧客とするまでに成長したのです。
シャトー・ペトリュスは当時から、メドック地区の格付け1級のワインと同等の高価格で取引されていました。そんなシャトー・ペトリュスの人気を決定づけたのが、1945年のヴィンテージです。その完璧なバランスと深い味わいで世界中のワイン愛好家を虜にし、シャトー・ペトリュスは伝説となりました。
マダム・ルーバの他界後、彼女の協力者であったジャン・ピエール・ムエックスが1964年にシャトーを引き継ぎます。彼が設立したジャン・ピエール・ムエックス社による品質への徹底的なこだわりと緻密な管理は、シャトー・ペトリュスの名声をさらに高め、現在の地位を確立するにいたっています。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)はなぜ高い?
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)はその値段の高さで知られており、一般的な相場は50~80万円ほどです。ヴィンテージのなかには1本300万円を超えるものもありますが、シャトー・ペトリュスの値段の高さにはどのような理由があるのでしょうか。
ここからは、シャトー・ペトリュスの値段が高い3つの理由を解説します。
1.産地の特異性と希少性
シャトー・ペトリュスは、フランス・ボルドー地方のポムロール地区にある小さなワイナリーで生産されています。この地域は、メルロー種のブドウの栽培に最適な土壌を持っています。
特に、シャトー・ペトリュスの独特な風味の実現に貢献しているのが、「スメクタイト」と呼ばれる粘土です。この粘土には膨潤性があり、乾燥しているときもほどよく水分を溜め込むことで、ブドウの健全な発育を助けています。
シャトー・ペトリュスが使用している土壌には小石なども混ざっておらず、ブドウが深く根を張ってミネラル成分を吸収できる恵まれた環境となっています。
しかし、この土壌が存在するのは限られた範囲のため、シャトー・ペトリュスは生産量が少なくなっています。それが希少性の高さにつながっているのです。
実際に、シャトー・ペトリュスは年間4,500ケースほどしか生産されていません。5大シャトーが年間2万ケース以上の量を生産していることを考えると、その希少性は極めて高いといえるでしょう。
2.メルローの純粋な味わい
メルロー種のブドウをメインとすることで純粋な味わいを実現していることも、シャトー・ペトリュスが高い理由の一つです。
通常のボルドーワインは、メルローやカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンといった複数の品種をブレンドして造られます。一方のシャトー・ペトリュスは、メルロー種の割合が高い比率で造られることがほとんどです。
ほかの品種を極力混ぜないことで、メルローの持つやわらかい口当たりや深みのある果実味が最大限に引き出されます。その結果、シャトー・ペトリュス特有の濃厚で滑らかな味わいが生まれるのです。
シャトー・ペトリュスでは、高品質なメルローを厳選して使用しているため、限られた量のワインしか生産できません。このこともまた、シャトー・ペトリュスの高価格の要因となっています。
3.徹底した品質管理と手作業による生産
シャトー・ペトリュスでは、ブドウの選別から発酵、熟成にいたるまで、すべての工程が手作業で行なわれます。収穫は200人弱の職人によって完全手摘みで行なわれ、そのなかでも最高品質のブドウのみが使用されます。
シャトー・ペトリュスの味を大きく向上させているのが、「グリーンハーベスト」と呼ばれる栽培方法です。具体的には、ブドウが熟していない段階で青い実を間引きし、残された実の品質を高めたり、ブドウの葉を摘んで日光が当たる量を調整したりします。
グリーンハーベストではブドウの実を間引くので、どうしても生産量は少なくなります。それでも、高い品質を維持するために最大限の努力をしている点に、シャトー・ペトリュスのプライドが感じられるでしょう。
シャトー・ペトリュスでは、収穫のタイミングでも独自性を発揮しています。一般的なワイナリーでは早朝にブドウの収穫を行ないますが、シャトー・ペトリュスの場合は霜による水滴の影響を嫌い、収穫の時間を午後に限定しています。こうしたシャトー・ペトリュスのこだわりは徹底しており、「ブドウについた雨の水滴を、ヘリコプターの風圧で飛ばした」という逸話もあるほどです。
ワインの熟成には新樽100%のオーク樽が使用されるため、樽由来の芳醇な香りが加わります。さらに、ワインの劣化を防ぐため、厳格な温度・湿度管理のもとで熟成が行なわれることも価格の高さにつながっています。
そのほか、セメントタンクでのアルコール発酵など、伝統的な製法を重んじていることもシャトー・ペトリュスの特徴の一つです。昔ながらの味わいを守りながら、限定生産を続けるシャトー・ペトリュスは、値段に見合った稀有なワインだといえます。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の年代ごとの買取相場
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の買取相場は、ヴィンテージ(製造年)によって大きく異なります。特に、評価の高い当たり年や、熟成が進んで飲み頃を迎えた年代のものは、高額で取引されます。そのほか、保存状態や付属品(オリジナルの箱や証明書)の有無も査定額に影響を与えるでしょう。
年代ごとのシャトー・ペトリュスの買取相場を、以下の表で紹介します。なお、実際の買取価格は保存状態などによって大きく変わるため、ここで紹介する数字はあくまでも一つの目安と考えてください。
製造年 |
買取相場 |
1945年 |
~38万4,000円 |
1981年 |
~16万円 |
1982年 |
~23万6,800円 |
1985年 |
~18万2,400円 |
1988年 |
~16万円 |
1989年 |
~25万6,000円 |
1990年 |
~25万6,000円 |
1995年 |
~19万2,000円 |
1996年 |
~19万2,000円 |
1998年 |
~21万1,200円 |
2000年 |
~32万円 |
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の当たり年とは
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の「当たり年」とは、その年の天候条件が最適で、ブドウの出来がよかった年のことを指します。一般的に、ワインの出来はブドウを栽培する場所の天候に大きく左右されます。日照時間や降水量、気温のバランスが理想的であるほどワインの品質は向上し、高評価を受ける傾向があるのです。
天候が品質に大きな影響を与えることから、ワインの年代はブドウを収穫した年で決まります。例えば、シャトー・ペトリュス1990年の場合は、1990年に収穫したブドウを使用していることになります。ワインは収穫のあとに熟成などの工程を経るため、発売はブドウを収穫してから数年後となりますが、年代は収穫した年を基準に決められるのです。
以下の年のシャトー・ペトリュスは、ボルドー全体でもグレートヴィンテージとされています。
【シャトー・ペトリュスの当たり年(グレートヴィンテージ)】
年代 |
特徴 |
1945年 |
戦後の名作。最も希少なヴィンテージの一つで、その出来栄えでシャトー・ペトリュスの名声を大きく高めた。 |
1961年 |
濃厚でバランスが良く、熟成能力が高い逸品。出荷量が少なかったこともあって希少性が高く、1本300万円超で取引されることもある。 |
1982年 |
世界的に評価されるボルドーの最高峰ヴィンテージ。猛暑を経てブドウが完熟しており、凝縮された果実の味わいが楽しめる。シルクのように滑らかなタンニンも特徴的。 |
1990年 |
果実味と熟成ポテンシャルの完璧なバランスを味わえる。ヨーロッパ全体で非常に作柄のよかった年。1989年に続いて、ロバート・パーカーが100点を付けたことでも知られる。 |
2000年 |
ミレニアムイヤーで話題性が高く、価値が上昇したヴィンテージ。年間を通してボルドー地方は天候が良く、熟成ポテンシャルの高い名品が多く造られた。 |
2009年 |
どちらも優れた天候で、ブドウの品質が抜群に高くなった。2年連続でパーカーポイント100点を獲得。 |
2015年 |
近年の最高ヴィンテージとされており、今後価値が上がる可能性もある。こちらも2年連続でパーカーポイント100点を獲得。 |
ちなみに、シャトー・ペトリュスの名声には、ワイン評論家のロバート・パーカーの評価が大きく関係しています。ロバート・パーカーは、「神の舌を持つ男」と呼ばれることもある、ワイン評論における世界的な権威です。
そのロバート・パーカーが、シャトー・ペトリュスを「ボルドーで最高のワイン」と評し、口を極めて称賛しました。特に、シャトー・ペトリュス1961年には100点を付けたうえで、「不死身のワイン」と褒め称えました。その結果、シャトー・ペトリュス1961年は世界中のワイン愛好家が憧れる存在となったのです。
ほかの年代のシャトー・ペトリュスにも、パーカーはたびたび100点満点の評価を与えています。ワインの世界的な権威が何十年にもわたって支持し続けていることも、業界におけるシャトー・ペトリュスの評価の高さにつながっています。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)を売る際は保存状態が大切
先述のとおり、シャトー・ペトリュスの買取価格は、年代だけでなく保存状態にも大きく左右されます。ワインの正しい保管方法や査定のポイントを把握したうえで、なるべく高く売却するとよいでしょう。
ここからは、シャトー・ペトリュス(Château Petrus)の保存などについて説明します。
1.ワインの保管温度と湿度
シャトー・ペトリュスは長期熟成に適したワインですが、そのためには適切な保存環境が不可欠です。具体的には、温度は15度前後、湿度は65%前後が理想的な条件とされています。
温度変化が激しい環境で長期間放置すると、ワインの劣化が早まる可能性があります。また、空気が乾燥しているとコルクが縮み、瓶との間に隙間ができて酸素が入り込み、ワインが酸化してしまう恐れもあるでしょう。保管の際はワインを横に寝かせ、コルクが乾かないようにする必要があります。
また、日光や照明の光なども中身の変質や変色につながるため、暗所で保管することが大切です。そのほか、強い臭いのあるものと一緒に保管したり、振動のある場所で保管したりするのもよくありません。
高額で取引されるシャトー・ペトリュスだからこそ、適切な環境での保管が重要です。温度や湿度を一定に保てるワインセラーなどを利用して、シャトー・ペトリュスをベストな状態で熟成させるとよいでしょう。ワインセラーを選ぶときは、収納できる本数や冷却方式、電気代などのポイントを比較し、ニーズに合った製品を見つけてください。
2.ボトルの状態をチェック
ワインの買取査定では、ボトルの状態が価格に大きく影響します。ラベルが剥がれていたり、キャップシールが破れていたりすると、評価が下がる可能性があります。ボトル表面の傷なども減額につながるため、外観を損なわないよう丁寧に取り扱うことが大切です。
また、コルクの劣化などでワインが漏れる「液面低下(リーク)」があると、品質に問題があると見なされ、買取価格が大きく下がることがあります。ヴィンテージワインにおいて、多少の液面低下は大きな問題ではありませんが、目減りしている量が多い場合は注意しましょう。
ちなみに、シャトー・ペトリュスに限らず、開封済みのワインは買い取りの対象にならないことがほとんどです。開封すると中身の酸化が進み、ワイン本来の香りや味わいが損なわれたり、カビが発生して沈殿したりする場合があるためです。シャトー・ペトリュスの売却を検討している場合は、必ず未開封の状態で査定に出してください。
3.ワインの証明書や購入履歴を残す
高級ワインの買い取りでは、購入証明書やインポーターのシールがあると査定額が高くなりやすいです。オリジナルの木箱や外箱なども愛好家にとっては重要なポイントであり、付属品がそろっていれば買取市場における需要が大きくなります。
特に、世界的に有名なシャトー・ペトリュスは偽物が多いワインです。真贋を証明できる書類や付属品があると信頼性が高まり、より高値で取引される可能性が高くなります。
シャトー・ペトリュスの保証書や木箱などの付属品がある場合は、査定の際にボトルと併せて提出することが重要です。
4.ワインの市場価格を確認
シャトー・ペトリュスの価格は、ヴィンテージによって大きく変動します。査定額が適正かどうかを見極めるためにも、買い取りに出す前に市場価格を調べておくとよいでしょう。
特に、「当たり年」として評価されているヴィンテージは高値が付きやすいです。需要が高まるタイミングを見極めることで、より高額での取引が可能になるでしょう。
シャトー・ペトリュスの高値が付きやすいヴィンテージとしては、1961年や1990年、2000年などが挙げられます。当たり年以外でも市場価格は日々変動しているため、アンテナを張ってこまめに情報をチェックするのがおすすめです。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)はどのように飲むのがおすすめ?
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)のような高級ワインを飲むときは、正しい方法でその魅力を最大限に引き出すとよいでしょう。ここからは、シャトー・ペトリュスのおすすめの楽しみ方を紹介します。
1.適切なデキャンタージュが必要
シャトー・ペトリュスは長期熟成タイプのワインであるため、飲む前にデキャンタージュを行なうことが推奨されます。デキャンタージュとは、ワインをボトルからデキャンタに移し替え、空気に触れさせることです。
熟成年数が長いヴィンテージの場合、デキャンタージュを行なうことで香りが開き、複雑な風味がより楽しめるようになります。1~2時間ほどのデキャンタージュで、シャトー・ペトリュスの奥深い香りや味わいを引き立てるとよいでしょう。
2.最適な飲み頃の温度
シャトー・ペトリュスの最適な飲み頃の温度は、16~18度とされています。ワインは冷えすぎると本来の香りが閉じてしまい、逆に温かすぎるとアルコールの刺激が強調されてきつい印象になります。そのため、シャトー・ペトリュスは適切な温度にしてから楽しむことが重要です。
3.料理とのペアリング
シャトー・ペトリュスは、しっかりとしたタンニンと深みのある果実味が特徴のワインです。赤身の肉料理や熟成チーズと相性が良いとされているため、一緒に楽しむことをおすすめします。
特に、牛フィレ肉のローストやフォアグラのソテー、トリュフを使った料理と合わせると、シャトー・ペトリュスの味わいをより引き立てることができます。
シャトー・ペトリュス(Château Petrus)を売るならまねきやがおすすめ
シャトー・ペトリュスは市場での需要が大きく、高値での売却が期待できるワインです。なるべく高く売るためにも、ワインの買取実績が豊富で、適正価格を提示してくれる買取専門店を選ぶとよいでしょう。
高級ワインの査定に慣れていない業者では、適正な市場価格が反映されず、本来の価値よりも低い価格で取引されてしまう可能性があります。
その点、まねきやはワインの買取実績が豊富です。シャトー・ペトリュスを含む高級ワインの価値を、正確に査定できる専門スタッフが多数在籍しています。
店舗買取・出張買取・宅配買取の好きな方法が選ぶことができ、何かと忙しい方も安心です。シャトー・ペトリュスの売却を検討している方は、ぜひまねきやにご相談ください。

この記事の監修者
水野 政行 | 株式会社水野 代表取締役社長
高価買取専門店 まねきや 最高責任者・鑑定士
今まで 54,750点以上の査定実績。
金・貴金属・宝石全般、ロレックスなどのブランド時計、ブランド品全般、切手、古銭、絵画、骨董品全般の査定を得意とする。
2021年より自社ブランドである「高価買取専門店 まねきや」をリリースし、全国に展開。
「売るはめぐる」をコンセプトにした、買取専門店である当店を一人でも多くの方に体感していただくために、私の約15年間の業界経験の全てを注ぎたいと思っております。